男性と女性のあいだ
山内緋呂子

仕事以外で
誰とも話せなくなった。
植木鉢に名札をつけた。
「人は愛し合っていないと生きていけない」という映画の台詞
「一人暮らしの女が猫を飼ったら終わりだ」という雑誌の記事

野良猫のわき腹は、素晴らしいのに。

寝ている喜捨を、ほんものの喜捨だと思っていた。死んでいるのか、と思うこともあったし、寝ているのに、たくさん喋りすぎているようにも見えた。
昨日、開店前のお掃除で、喜捨の台詞を思った。
「花沢さんって、家だ。チョモランマから帰ってきた場合、帰る家だ。
 あんたって家か?」
お店の右から左へ、モップの動きに合わせて泣いた。
「別れるなら、そんなことは言わないで欲しかった。」
と、よく雑誌の記事になっているようなことを思った。

故郷ふるさとを捨てるということは
すり替えと、 仕方ないことのあいだに
愛を見つけること

私のこころは中年男性らしい。
やせているOLに弁当を支給する人になりたい、と思うし
風の強い日に、タイトスカートの女の集団を見るとがっかりする。


きりん公園に行く。
水筒にそば茶を入れて、たばこを二ケース。
タイヤの上の子供や、鉄製のうねったパイプをはう子供を見ると
「そんなに楽しいか。子供よ」
と、話しかけたくなる。
私も大人になったなあ。
今頃、喜捨も大人の男性だから、もっと彼のことをわかるだろうけど。これ以上わかったら大変だ。
ストリ教授は、簡単に言うと、怒っている老人だ。「二十歳はたちの頃の失恋を昨日のことのように覚えている。」と、タモリと同じことを言っていた。
若い女の子の憧れの的である桐絵教授は
「あなたが彼を忘れられないのは、彼が、”別れた人”だからよ。手に入らないものって、人は常に望むものよ。」と言った。
この人は、男を愛したことがないのではないか、と思った。
私の部屋には、「期待すんな」と書かれた掛軸がかかっていることを、この人には言えない。
少なくとも
私の将来は、
「ユーモアで言っているのよ。私は」
が口癖の
中年女性ではないだろう。



カンチェルスキスさんとの連散文です。
前回、彼の「骨まで見たいと 骨しか見たくないのあいだ」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=8557

つながっているのは、すこうしです。流れとしては、頑張っております。お互い自分の趣味に走りすぎの感ありでございます。皮肉めいた終わりになりましたが、私の将来はどうなんですか?(笑)頑張ります。


散文(批評随筆小説等) 男性と女性のあいだ Copyright 山内緋呂子 2004-03-12 18:11:42
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