ちゃぶ台を囲んで
atsuchan69

卓袱台の上に並んだ、小鉢――
蜆の佃煮/ 沢庵/ 茄子の煮びたし/
大粒の南紅梅/ めざし/
玉子焼き/ 烏賊の塩辛/etc

大皿に「戻り鰹のたたき//
足摺岬から我家の四畳半に
ザブンと打寄せる、大波!

盛られた切り身に飾られた
白髪ねぎやスダチ
大蒜の薄切りやミョウガ、
大葉、小菊の乱舞
たっぷりの土佐酢に浸して・・・・
なんと豪快な料理なんだろう

風呂上り、機嫌よさそうに
夏物の半袖シャツを着て
父ちゃんが登場し/上座にすわる/
昔風パーマヘアーの母ちゃんは、
あわてて台所からビールを運んでくる/
姉ちゃんが早速ごはんを茶碗に盛り始めた

用無しの扇風機がまだ置いてある
日に焼けた畳の上を、残り蚊が低空飛行した )))

「テレビつけろや

いつものように父ちゃんは、
夕刊を読みながら
 ビールを飲む。
「父ちゃん、うまいんか? それ・・・・
「泡だけ飲んでみぃ
「うぇーっ、にがい!

百貨店ではたらく姉ちゃんが
今日は重大発表をするという・・・・
「あのな、うち、ええ人できたんよ
「なんやて?
「結婚するかも知れへん
母ちゃんは父ちゃんにビールを注いで
「・・・・らしいわ// と言う

「どこの馬の骨やネン? そいつは
「うちの職場の上司
「年は?
「七つ上や
「えらいおっさんやないか
「けど、お互い本気やし

それから暫く、父ちゃんは黙ってビールを飲んだ
母ちゃんは大皿の鰹を小皿にとりわけながら、
「ちゃぶ台、ひっくり返さなんだナ、父ちゃん//
と云う、
「あほ。ワシは星一徹か!
「知っとる、それ『巨人の星』やろ?
すかさず僕はフォローする

間もなくテレビで懐かしの歌番組がはじまった

姉ちゃんは、ナントカ明菜にどこか似ている
僕はすこしばかり寂しい思いに駆られた・・・・
「姉ちゃん、もうじきこの家に居らんようになるんやろ?
「ああ、たぶん・・・・な
「ほな、姉ちゃん。今晩一緒に寝てや
「ええよ。でもへんなとこ触らんといてナ

夕食のあと、卓袱台をかたづけて
僕と姉はこの狭い居間に布団を敷いた
もちろん、姉弟なので )))
――オッパイくらいは触らせてもらった


未詩・独白 ちゃぶ台を囲んで Copyright atsuchan69 2006-09-15 00:52:16
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