パロ・デ・ジュビア
大覚アキラ

雨の音が聴こえるので
ベランダに出てみたら
一面の星空で
雨なんか
一滴も降っていない

稲妻のように
乾いた荒野のイメージが
瞼の裏側に投影されて
見たことのない色で光る太陽が
真っ暗な空に浮かぶ
残像

背中から
懐かしい香りが沸き立ち
本能の奥の奥にある
何かに
火を点ける

スズランの無垢な香り
夏の日の
白いスカートの裾が描く
あざやかな
残像

昔の恋人は
あの日のままの
無垢な白さをまとい
スズランの香りに包まれながら
乾いた荒野に立つ
残像

ねえ
喉が渇いているんでしょう
呪文を
教えてあげるわ


パロ・デ・ジュビア


前触れもなく
堰を切ったように
降り注ぐ


前触れもなく
堰を切ったように
降り注ぐ
残像

残像

残像

思い出した

帰らなくては

雨の降る
あの場所へ


自由詩 パロ・デ・ジュビア Copyright 大覚アキラ 2006-09-05 21:19:28
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