恋の名残りに
石瀬琳々

通り雨がきらきら光り
僕の目に髪に肩に降りかかる
誰もいない薔薇園にひとり
堅く閉ざされた空を見つめていた
傘もささずに僕は
風に心をさらされたまま


果たされなかった約束は
いまだ咲かない薔薇のようだ
僕のそばに思わせぶりにたたずむ
つぼみのままの薔薇
僕はその色をついに知らず
けれど 名前は<ラブ>
その薔薇のただひとつの名前は


僕はかたくなに
その名前を呑みこもうとしている
けれど お前は<ラブ>
僕の心にあざやかに巣食う
なつかしい恋の名残りに
恋しい夢の名残りに


待つ事に疲れた僕に そして
通り雨がきらきら光り
薔薇の葉を頬を心を濡らして



自由詩 恋の名残りに Copyright 石瀬琳々 2006-07-13 14:54:22
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