月の光がさしこんでいる
誰もいない部屋
片隅で
灰色猫が爪を研ぐ

テーブルの上には
開封されることのない手紙
赤い切手の消印は───

窓の外を
遠い汽笛が通り過ぎてゆく

 ....
通り雨がきらきら光り
僕の目に髪に肩に降りかかる
誰もいない薔薇園にひとり
堅く閉ざされた空を見つめていた
傘もささずに僕は
風に心をさらされたまま


果たされなかった約束は
いま ....
白い雲青らむ渚描いてく
    心の色は自由自在


砂浜に続く足あと追いかける
    麦わら帽子風のステップ


海の色変えてゆくまに一瞬の
    楽章を見る{ルビ波濤=はとう ....
水が
光のように満ちる
その上に折鶴を浮かべ
はるかなその波紋を数える
夏の野は風の{ルビ恋歌=マドリガル}
花摘みの少女は一心に
草のまにまに漂っていた
白い花ひとつ{ルビ挿頭=かざし}にして
赤い裳裾をしめらせながら
濃厚な夏の匂いがたちこめる
姫百合の花 ....
草の上に寝転んで
そのまま流されてゆく
ゆっくり
雲の速度で
紺碧の輝きの海に
許されぬ恋が眠っている
静かにそっと おののきながら
それは波間に漂う白い貝
だけど 今日は
海へ漕ぎ出した
その想いを摘みとるために

 真珠とり
 真珠とり
 ....
花ならば君を待つのも安きこと
    ラベンダー蒼きこのうすにおい


この想い忘れてしまえマーガレット
    花びら散らし涙にくれる


ローズマリーやさしい罪は思わせぶり
   ....
{引用=夜を裂く青星の爪 雄たけび上げ
駆け下りて来い わたしのなかへ}

夜の天蓋に{ルビ静寂=しじま}はこぼれ
瞬くのは
ただ蒼い隻眼
その牙は光り その爪は光り
そのたてがみは光り ....
何度でも愛しているとくり返す
    雨打つ窓にムスカリ蒼く
金色に染め抜かれた黄昏の中で
一人ブランコをこぐ
おもいでは
陽だまりのようにあたたかく
消え残りの夕光のように
淋しくそこにゆれている
切ないものは
この胸の痛み

今朝一番に見た
青い空
それは
濡れた樹々の梢に透かし見た
緑の扉
明るい庭先のその扉を夢見る
光と影を刻み憧れにたたずんで
あるいは移り変わる街の喧騒の中に
待ちくたびれて
人知れず錆びついていたあの扉
そ ....
石瀬琳々(253)
タイトル カテゴリ Point 日付
真夜中の夢自由詩10*06/7/15 22:12
恋の名残りに自由詩7*06/7/13 14:54
海の画帳[group]短歌9*06/7/4 16:22
静か[group]自由詩14*06/7/2 22:26
姫百合野[group]自由詩12*06/6/30 15:05
旅行[group]自由詩9*06/6/25 22:14
真珠とり自由詩15*06/6/23 14:31
花言葉[group]短歌14*06/6/16 15:24
シリウス自由詩12*06/6/9 15:19
失意[group]短歌9*06/5/23 15:07
おもいで[group]自由詩6*06/5/17 14:09
切ないものは[group]自由詩6*06/5/12 14:27
緑の扉[group]自由詩17*06/5/5 21:12

Home 戻る 最新へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 
0.04sec.