桜残照
千波 一也


しずくのことは
一輪、
二輪、と数えあげたく
青空ならば頷いてくれるだろうか と
躍らせた髪


真昼の月の通い路と
銀色乗せた浅瀬の流れは
中空で いま
十字を結ぶ

かたちを選ばなければ
不可視とは無縁なはざまで
祈りは
こんなに美しい



氷と雪との深い眠りを
妨げぬ色で鳥たちは啼き
氷と雪との深い眠りに
障らぬ色で獣は駈けてゆく



鮮やかな言の葉に
慎ましい光を添えながら
滅びを見据えて
あまたに 芽のほころぶ季節

ひらく、
ゆれる、
かおる、
謳歌の舞台の
そのはじまりは
いずれの花の彩りか



七色含んで割れそうなしずくは
いずれの花に
零れるか





自由詩 桜残照 Copyright 千波 一也 2006-06-12 22:14:58
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