名も知らぬ君から貰ったビスケット
こめ

ポケットに入れっぱなしにしていた

まなあたたかいビスケット食べ

ほろ苦い味が口の中に拡がり

なんだかしょっぱいなと思ったら

嗚呼何だ、瞳から落ちる雨のせいかと

確認したときは目の前はもう

にじんでいてよく見えなかったよ

名前も知らない君と

一緒に電車に乗り込んで

ふたりっきりしかいない世界のなかで

君と僕は巣穴に隠れたきり出てこない

ひょっこり出した僕の頭

そして君もひょっこり頭を出して

目が合えばスグに巣穴に戻ってなかなか出てこない

人と人との人間観察

終点したら走って降りて

古いデパートの屋上に

階段で上り息切れしながら向かい

扉を開くと誰もいない遊園地

ふたりで乗ったメリーゴーランド

観覧車、バイキング、お化け屋敷

ネオンに囲まれた都会を見下ろしながら僕と君は

フェンスに寄りかかり夜空を見つめていた

君はポケットからずっと握りしめていた

ビスケットを取り出して

僕のポケットにねじ込んでフェンスによじ登り

ネオンの誘惑が行き交う世界に飛び込んでいった

僕は見ているだけ

何も出来ずぼーとしてたら夜が明けた

ぼくは涙をぼろぼろ流しながら

君からもらったビスケットを食べています


自由詩 名も知らぬ君から貰ったビスケット Copyright こめ 2006-06-09 20:18:15
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