半知半能

あんずの木が
温かい午前の光に
淡く染められている
あんな風に笑えますかと
あなたは訊きましたね

異邦人と呼ばれる彼が
いつまでも私のそばにいられる訳も無く
いらだちと不安だけは
いらないよと
言い残して
行ってしまった

売り買いできる言葉に溺れる時代に
うつむいて見えたのはぐらついた足場で
嘘と見栄で危なく支えられている
うまく生きて行くことだけを教えられた学生時代に
噂で聞いた隣町の巡業サーカスのことが
埋もれず時に思い出されるように
浮かぶ記憶の泡の中のあなたは
潤いを与えてくれます


笑みがこぼれる度に
永遠のようだった時を越えて


おーいと
遅れてくる声に
思わず泣いたりしないように
お日様の下で風に包まれながら
大きい笑顔の用意をして
おかえりと言う日を 待っている




自由詩Copyright 半知半能 2006-04-28 01:28:36
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
50音の習作たち