何も道をやってこない
クリ

取り残された 丑満つ時の森の道
置いてけ堀の僕が月灯りに帰り道を探す

同じところを何度も歩いているのは
狐の所為ではなく僕が足を引きずっているからだ
いきなり目の前に立ちはだかるのは
ヌリカベではなく立入禁止の鉄条網
道端に魔女の箒が折れて捨てられている
小鬼は動物園の檻の中で反復行動
陰陽のフレーズが洗剤のCM使われる
この国で 不思議は 死んだ
禍々しい 物の怪は消えた
こどもが越える峠は塞がった

僕はもくもくと歩く でも
何も道をやってこない
とうとう
僕だけに なってしまった



ななひとさんに触発され、もちろんブラッドベリの『何かが道をやってくる』へのオマージュとして

                 クリ、キップル 西暦二千年霜月廿日


自由詩 何も道をやってこない Copyright クリ 2004-02-09 02:14:08
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