三月
大覚アキラ

マフラー巻いて早足で歩くと汗ばむのに
カーディガンだけで信号待ちしてると肌寒い

そんな
三月の風に腰のあたりを撫でられながら
住宅街の隅の小さな公園のベンチで
悲しいふりして煙草をふかそう

東の空から
ロールシャッハテストの染みみたいな感じで
夜がじわじわと広がっていくよ
ほら
とてつもなく大きな黒アゲハが羽根を広げて
世界を包み込もうとしている

マフラーは明日燃やしてしまおう
カーディガンもゴミ箱行きだ

自分が死んだり
誰かを殺したりする
その代わりに
有り金ぜんぶ煙草に換えて吸い続けるんだ
この住宅街の隅の小さな公園のベンチで


自由詩 三月 Copyright 大覚アキラ 2006-03-17 20:23:30
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