佐々宝砂

どうも私にはあるべきものがないらしい、と
気づいたのは昨夜、
生まれてはじめて銭湯に入ったときであった。

客の一部はタオルで下を隠していたが、
そこにあるものはあってしかるべきものであって、
特に恥ずかしがる理由は見当たらなかった。

しかし私はどうすればよかったか。

私にはあるべきものがないのであった。
私はタオルで前を隠したまま湯船に入ろうとしたが、
客の一人に怒られてしまった。


自由詩Copyright 佐々宝砂 2006-03-10 16:32:02
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