蝋梅
佐々宝砂
浴衣を着たこどもなのでした
まだ菜種梅雨も過ぎぬというのに
二本の鉛筆のように突き出た裸足は
春泥にまみれているのでした
これあげる
こどもはあかるい声で言いました
小さな手に握られていたのは
ほかほかと湯気をあげる餅でした
ありがとう と
私は答えたのでしょうか
その餅を私は確かに食べたのですが
顔をあげると蝋梅が咲いておりました
こどもはもう
どこにもおりませんでした
自由詩
蝋梅
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佐々宝砂
2006-03-10 16:00:35