ようこそ 新米くん
佐々宝砂
いつだって空は俺の庭だったよ
無法なソ連の女パイロットが飛び交うときも
嫌味な米軍野郎が進んでくるときも
空はきっと俺たちに逃げ場を提供してくれた
あるとき攻撃をすりぬけて雲の上に出て
俺は奇妙な飛行機をみた
紙と木でつくったような複葉機だった
それは冗談みたいにのどかに浮かんでいた
音さえ立てないその複葉機の機体には
ひとつの虫の死骸もついていなかった
操縦士は 俺に やあ と挨拶した
そうさ 俺がさっき君に挨拶したみたいにね
そうさ ようこそ 新米くん
ここは飛行機乗りの墓場なのさ
未完詩集「百鬼拾遺」より
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