saraba
大村 浩一

ふり返れば
ずいぶん長い春だった
ということになるんだろ
誰でも実際には数日から5〜6年
長くてもせいぜい半世紀

保険会社の再建策を綴った白い封書が届く
居留守電話には彼からのメッセージ
4が2になり
1になって0になる
そんなことの繰り返し
線路が線路跡になったって
ほんとうに困るひとは自分だけ
やるべきことばかりしょい込むより
晴れやかな失業抱えても
やりたいことやっておいたほうが


すべては過ぎる
すべては過ぎる
うつくしい朝焼けで始まって
うつくしい夕焼けで終わってほしい
けれど夜半にナースコール


年老いたひとの黙読
それがとうとい校閲と気づいて
じっと待っていた
切り出される話がどんなに見当違いでも
聞いていようと思った


ずいぶん長い春だったね
ふりかえればきっとそう言うことになる
ずいぶん長い春だった
オヤスミ オヤスミ


これで やっと
ようやく これから
あらかじめさだめないものの
ほうへ



初稿 2001/03/15
改稿 2006/03/09


自由詩 saraba Copyright 大村 浩一 2006-03-09 12:56:11
notebook Home 戻る