もし俺が総理大臣なら
死を見世物にする
東京ドームにて夜七時
盛大なギロチンショーは
テレビにて全国中継される

今日は四歳の子供を
立体駐車場から突き落とした
十二歳の少年の処刑です
最近は凶悪な少年達が多く
少年法などなくしてしまえという
国民のたっての願いも
かなえられました
さあ、少年が連れてこられました
だいぶ痩せています
目が真っ赤です
ずいぶん泣いていたんでしょう
さあ、ギロチンに首が乗せられました
あどけなさの残る顔が
いっそう歪んで
少年は叫びました

　ごめんなさい　ごめんなさい
　許して下さい　何も分からなかったんだ
　分からなかったんだよ　お願いです
　許して下さい

子供の声が
子供の泣き叫ぶ声が
ドームの中に響いています

　わああああ　わああああ　許してええ
　死にたくないよう　ごめんなさい
　許して下さい　おかあさん　おかあさん
　わああああ　死にたくないよう

この声を聞いて
場内から声が上がりました

　残酷だ！　やめろ！
　かわいそうじゃないか！
　許してやれよ！

その声を聞き
総理大臣である俺は言うだろう

　ふざけるな！
　これはお前達が望んだことだ
　少年を甘やかすなと
　お前達が言ったことだ
　それとも自分の見えないところで
　死んでほしかったのか？
　お前達は卑怯者だ
　死ぬということを分かりもしないで
　ただただ目の前にある事件に振り回され
　人の生死を頭の中だけで決定する
　そして自分を正しい人間だと
　思い込んでいる
　お前達は愚か者だ
　この少年はお前達が支持した法律にのっとり
　お前達の目の前で
　ギロチンの刃を落とす！

そして少年の首が
泣き顔のまま
血にまみれて転がり落ちました

死を見世物にせよ
死を見世物にせよ
まるで無菌室で育ったように
死を頭の中だけで理解してしまった
俺達のために
死を見世物にせよ
死を見世物にせよ