どうでもいい真実
紀ノ川つかさ

砂浜に這い上がり
産卵を始めたウミガメが
涙を流す
卵は砂の中に置き去りで
母はそのまま海へと帰る
生まれた子の姿を
母が見ることは無い
どの子が生き残り
どこ子が死んでしまうのかも
母には分からない
せめて
涙を流すだけ
少しも悲しまずに
この場を立ち去ったわけではないと
分かってほしいから
ひたすら涙を流す

ところが正確な話は
あれは涙ではなく
体内の塩分を排出する
ウミガメの身体機能である
別に悲しんでいるわけではない
これが真実だ

でも
いったいこの真実に
どれほどの価値がある?
真実こそが素晴らしいと
言う人々よ
答えなさい



自由詩 どうでもいい真実 Copyright 紀ノ川つかさ 2003-07-11 23:02:20
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