Pied Piper
大覚アキラ

綿飴のような雪が降る
真昼間の御堂筋を
デモ行進の労働者たちに紛れて歩く

肩に 髪に
降り積もる雪が
おれたちの影までも
白く塗り潰してゆく

そういえば

子どものころ
登山家か
船乗りになりたかったんだ おれ

世界中の山のてっぺんに
足跡をつけるか
さもなくば
世界中の海のど真ん中で
小便を垂れるか

馬鹿げてる
あまりにも馬鹿げた夢だ
登山家や船乗りじゃなく
どうせならいっそ
山賊か海賊なら
夢も叶っていたかもしれないな

アスファルトに
うっすらと積もり始めた雪
そこに
おれたちの磨り減った靴底が
みっともない足跡をつける

この行進の目的地が
いったいどこなのか
誰も知りはしない

なぜだか
もう
二度と帰れないところへ
向かっているような
そんな気がしたのは
きっと
気のせいだろう


自由詩 Pied Piper Copyright 大覚アキラ 2006-01-30 17:41:48
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