Biotope-Head
人間
:20060117
一昨日、飼い猫が死んだので
昨日の激情に任せて
今日で、お前の頭を輪切りにしました
頭部からっぽ、予想通り
先月、駅で見知らぬバター臭い女から盗んだペットボトルの重質ナフサを注ぐ
とぷとぷちゃぽん
なるほどちゃぽん
「目をつむりなさい馬鹿、こぼれるから」
面倒そうにまぶたを閉じるお前が可愛い
矢状縫線と舌の根
左右眼窩の対角線
に、しっかりと定規を当てて
その重心に浮く一匹の真っ赤っ赤なボウフラは何?
それを抱きしめている塗れたコートを着込んだ小人は誰?
小人にとって真っ赤っ赤なボウフラは
臓器であり
愛嬌であり
ポップアート同然である
真っ赤っ赤なボウフラは無秩序な権化
その象徴である真っ赤っ赤な帽子を被った小人に抱かれて幸せそう
小人のニヤニヤには真っ赤っ赤が宿って今晩に覆いかぶさる
もう寝たほうがいい。
あ
根が、
お前の鼻からはみ出てる、
だから私が食い千切る
:20060118
一昨日に死んだはずの猫が
昨日で切ったお前の頭に
今日、逃げ込んできた
アッ、足を滑らせて重質ナフサに溺れて幸せそうな死んだはずの猫
小人とボウフラは心底嬉しそうに希望の歌をうたう
小人のコートはすっかり乾いてカラシ色、真っ赤っ赤な帽子とは合わない
その光景を横から、根が横から邪魔するものだから
「お前は、また、この」
私は重質ナフサに顔を沈めてお前の根を食い千切る
呼吸は泡になる泡は鏡になる鏡は雄弁な私になって、茶化す
目が合う、死んだはずの猫の目は左右交互に重低音を鳴らす
それはウーファーの焦点、
それなりの卑怯な波、
それをコートで乗りこなす小人のニヤニヤ
それを全面的に許すボウフラの真っ赤っ赤が脳の裏や溝に張り付いて取れない
顔を上げる
袖で顔を拭う
お気に入りの白磁陶器柄シャツもダメージジーンズも瑠璃色のカーペットも
ベタベタ
ちくしょう
重質ナフサに浮かぶ根無し草がゆらゆらと私を、茶化す
「どこに隠していやがった」
面倒そうにまぶたを開けるお前が憎い
見詰めたって
重質ナフサはこぼれて
頭部からっぽ、予想通り
散乱した根無し草と
コートを絞る小人と
あ、今、真っ赤っ赤なボウフラの中に死んだはずの猫が隠れた
:20060119
一昨日で切った頭と
昨日は許したはずのお前に
今日でさよならしようと思う
死んだはずの猫と小人とボウフラは
重心から逸れたものだから干からびて
お前は口から真っ赤っ赤なコートを垂らす
皆で私の部屋をベタベタにして私を、茶化す
一摘みだけ、根無し草を「貰っていく、からね」
私が一番、真っ赤っ赤
自由詩
Biotope-Head
Copyright
人間
2006-01-18 03:23:40