連音/夜を歩く
AB(なかほど)

 

はるかあとおくうのお かぜのおむこおにい
きてきいのおおとのお

ちり〜ん



ゆうおじさんのリヤカーが通り過ぎる

ゆうおじさんのリヤカーには
ぽるしぇ
と書いてある
僕らはそれに911と書き足した
ぽるしぇには最初
鉄くずが乗せられていた
そのうちそれは空き瓶や空き缶になったり
古新聞なんかにもなった
四十過ぎてからは何に気を使ってたんだか
夜に歩くようになっていた
その頃から腕にはロレックスが巻かれ
これはどうやら本物らしかったが
おじさんは
ひろおたひろおた
と自慢げに言った


道の真ん中で寝て3回ひかれたという噂
ドロボーケイカンで捕まったら電信柱に縄で縛られるという噂
くずひろいで豪邸を建てたという噂
子供の頃から一人で生きているという噂
これは嘘
ゆうおじさんはうちの親戚で
でも友達には言えずじまいだったなあ
ゆうおじさんのぽるしぇは
どこまでも
島の端から端までも走っていくという噂

本当じゃないかと思う
それから
また道の真ん中で寝てしまった


はるかあとおくうのお かぜのおむこおにい
きてきいのおおとのお そのむこおからあ
もおすぐうはるがあ やあってくるうやもおし
やもおうしれましえぇんん

ちり〜ん


今でも
ゆうおじさんのぽるしぇは
夜を歩いている




自由詩 連音/夜を歩く Copyright AB(なかほど) 2006-01-18 00:25:53
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