回復
七尾きよし

瞳から涙が流れ 流れだすもとにあるものに恋焦がれ
疼く胸のざわめきを止めるすべを知らず
ただなされるがままにもだえ
眉間にしわをよせることは意識の手をはなれ
存在しない愛しいものの影を追いただ恋焦がれ
生きている理由をさがす気力も失われたと深い息をはき
さがす必要もないことなのだからと君はぼくの瞳を見つめ言い
ぎゅっと君の手のひらをにぎりしめ さらににぎりしめ
いつの間にかこわばりは消え君はぼくをいざない
触れることで触れ合うことで ぬくもりの中に ぬくもりを感じ
満たされるようで満たされない
37℃の虚空の中で黄色い三日月が浮かんでいて
その上にまたがりぼくはギイコギイコとからだをゆさぶり
足をほうりあげ、あるはずのない地にバンっと両の足をふみしめ
ぼくはかけだしていく
ぼくは走り 走る
息をきらせからだ中の筋肉がきしみはじめるのを感じ
遠くきらきら光るものへむかって


自由詩 回復 Copyright 七尾きよし 2006-01-12 23:41:16
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