見知らぬ熱
砂木

ただ手を暖めるためだけに
両手を 握られて
この人が救急隊員でなかったら
ありえない事に
じっと まかせた

仕事と言ってしまえば
それまでで
人としての思いやりが仕事
でも
そこまでしなくても
私は 恨まなかった

冷たいですね
暖めましょうか

と 握られた手は
こたつのように暖かく
人の体温が 暖かい事に
いまさらながらに 気づかされ

信じられない人
信じたくない人
いろいろいても
許せることもあるんだなあと

見知らぬ他人の情けに
じっと 心を預けながら

私は きっと
手を 暖めましょうか なんて言えないだろう
でも それで 救われることを知ったのだから

信じられる事が 増える事を願いたい


自由詩 見知らぬ熱 Copyright 砂木 2005-12-30 10:11:52
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