見知らぬ熱
砂木
ただ手を暖めるためだけに
両手を 握られて
この人が救急隊員でなかったら
ありえない事に
じっと まかせた
仕事と言ってしまえば
それまでで
人としての思いやりが仕事
でも
そこまでしなくても
私は 恨まなかった
冷たいですね
暖めましょうか
と 握られた手は
こたつのように暖かく
人の体温が 暖かい事に
いまさらながらに 気づかされ
信じられない人
信じたくない人
いろいろいても
許せることもあるんだなあと
見知らぬ他人の情けに
じっと 心を預けながら
私は きっと
手を 暖めましょうか なんて言えないだろう
でも それで 救われることを知ったのだから
信じられる事が 増える事を願いたい