ふと気が付くと
愛を無くしたケガエルは
渇水時のダムのよう
カラカラに干からびて
部屋の隅に転がっていた

ミイラ化した粘膜は
彼等が忌み嫌う爬虫類の鱗のよう
かつて 愛し合った痕跡は
これっぽちも
感じられなかった

どうしたものかと困ったボクは
森の粗大物ゴミ係に相談した

無愛想で　おそらく哺乳類と思われる窓口係は
最後まで　ぞんざいな対応だったが
「破棄よりはリサイクルがトレンドですよ」と
時代遅れの台詞で　アドバイスをくれた

さっそく
カラカラに乾いた水に属するモノに
百円ショップで買ってきた変若水*を振りかけると
木目調のカエルの皮膚は
もとのみずみずしい粘膜に復元した

愛を復活させることに成功したボクは
いつまで
この方法が有効であるか
一抹の不安を抱えつつも
とりあえず　安堵のため息を吐いた

そして
復活したケガエルは
きょうも元気に
繁殖の歌を歌っている


*不老長寿の秘薬。