夜明けのメルヘン
umineko

あなたが愛と呼ぶものの
正体がわからない
愛がなくても
たぶん
抱きあったりできる
でも
抱きあったりできない
場合もある
だからといって
愛していたり
することだってある

愛は告げるものではなかった
夜明けが
誰の目からも明らかなように
にわとりが朝を
呼ぶのではない
ことばが
愛を運ぶのではないように

愛は
そ知らぬ顔でやってきて
私のとなりにちょこんと座る
私は
接し方がわからずに
どこかの新しい動物を見る目で
それをみつめている
愛はそこが居心地いいのか
ただ偶然そこにいるのか
しばらく私のとなりにたたずむ
私は
接し方がわからないので
息を潜める術ばかり学ぶ

おはようって
私がいえばよかった
愛はどこかにいってしまう
勇気とはしかし
私は思う
勇気とはおびやかすことだ
愛に何ももたらさない
私はとても疲れているが不快ではない
愛は始まり
愛は夜明け
愛は私のものではない

好きですって
私はいう

世界がいっせいに目を閉じる

 
 


自由詩 夜明けのメルヘン Copyright umineko 2005-10-19 06:10:39
notebook Home 戻る  過去 未来