ある定食屋で
不老産兄弟

上町の焦げ臭い定食屋の隅に
加藤が座っていた
何十年も前からここに憑いている

かつてはこの辺りにも産業があった
公僕たちがしなやかな課税に遊ばれ野原をかけめぐっていた
雨音を聞いた俺は外に目をやり
給仕に蛇の目を持ってこさせた

かきフライが冷めちまった

新聞の雇用欄を眺めていたのだ
そんなうまい話があるはずもなく
俺はかつての影をただぼんやりと追いかけている
映像として

あまりソースのしみていないのをいくつか口に運び
加藤の分も一緒に清算を済ませた

無表情の給仕から蛇の目を受け取り
あの雨音の中へと消えてしまった


自由詩 ある定食屋で Copyright 不老産兄弟 2005-10-03 12:06:32
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