海辺 の (二連作)
砂木
海辺に
打ち捨てられた羽衣
水底に たぐりとられ
心 なくすばかりの 果て
指が 訪れる
風に 似た とろむ甘さで
ふれる やさしく
どうして そんなこと してくれるの
どうして
抱き取られて
水泡の夢に 眼を つむらされ
あおい 色ふかく
つり こまれ て
あなたとなら
ちぎれても かまわない
海辺 の 古い砂
静かな浜辺に
訪れた 足跡
古い 砂 かれた小枝
波打ち際 飛沫受けて
立ち止まる 風が あおる
冴えた青空 眼を なぶる
いつから 歩いているのか なんて
どこへ 歩いているのか なんて
何 の役 にたつのか
うみ風に からまり つき
のみこまれていく 声
じゃまな死体は うちすてて
靴なんか はいたままでいい
誰も 傷ついたりしない
おかしくて おかしくて
帽子が 飛びそうで
抑えたままだったが
膝をついて くずれこんだ時
何もかもが とんだ
どこへでも いい
どこにでも
ずうっと 本当は こうして
砂をにぎって 生きたいんだ
海辺の 030613 海辺 の 古い砂 030615 著