橙色
A道化






扉が 開いたらば
扉が 閉じた
そうして
扉が 閉じたらば
扉は 開かない


誰かのシャツの白の残像は 
どうして これほどに
光に還元されがちなのだろう
などとは
呟かずに いよう


カーテンから失われてゆく 夏の水分は
落ちて 影になり わたしを流れ
ふたつの眼球は 橙色のままで
ただ すぐにも
表面張力が解けそうで


発さなかったわたしを 
わたしの頬の内側で転がしたらば
飴玉の痛みで わたし 窪んでゆく
発したわたしで 扉が閉じたらば
もう 扉は開かない


ふたつの眼球は 橙色のままで
何も 何も 何も呟かず 
もう 何も呟かず だけれども
ただ すぐにも
表面張力が解けそうで


人肌以外の何者でもないのに 
何となく わたし揺れてしまい
そんな 目的のない人肌でしかない
わたし 揺れるしかない橙色で
何も 何も 呟かずに いる




2002.6.


未詩・独白 橙色 Copyright A道化 2005-08-24 11:16:29
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