やわらかなくうきをひろげながら
紫乃

街の中心
その、少したかいところ

高架化されたせんろの上を
古びたでんしゃがはしる
ねむいからだをはこびながら
きみのすむ都会から、とおいまちへ

眼下にひろがるまち
せなかには洛陽
あかくそまる
まちはうみのように

だいぶかわったけしきから
すこしだけなつかしいくうき

  かたん、
      ことん


 (せんろの高架化がすすんで、
  もうこのあたりには踏み切りがなくなってしまった
  なつの夕方、電車がしかいをさえぎる瞬間の
  もうろうとした感じがすきだったんだ)


ひとのいないでんしゃ
ノスタルジーはかそくして
しずかに集束へとむかう

あかねにそまった電車と
ゆめうつつのからだ
らくようのまちを
すべるようにすすむ
そのすこしたかいところを
しずかに

  かたん、
      ことん






自由詩 やわらかなくうきをひろげながら Copyright 紫乃 2005-07-20 21:48:01
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