風にふかれて
恋月 ぴの

風の便りに聞いたんだけどさあ
20年も筆を折ったままだったおまえが
またぞろ詩を書いているんだってね

どうゆう風の吹き回しだか知らないけど
本棚一杯の現代詩手帳やユリイカ
荒川洋治やら訳の判らない詩人達の
詩集を総て投げ捨てたおまえが
また詩を書き始めたなんてねえ

遺書のつもりで書いているんだか
過去を振り返りたくなった年頃なのか
はたまた何やら書かずにはいられない
叫ばずにはいられない不幸でも
おまえの身に起こっているのか

夕闇迫る川辺に二人座って感じた
葦原を走る風はもう二度と吹かないし
赤く染まった水面を割って跳ねる
鱒はおまえの手をするりと抜けて
くねくねと身を躍らせ消えていく


自由詩 風にふかれて Copyright 恋月 ぴの 2005-07-10 18:27:09
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