居酒屋の「ジジイ」に愛をこめて
バンブーブンバ

居酒屋の「ジジイ」は啖呵を切った(採録・抜粋)

  *

 ボウズへ

  *

 そこのボウズ
 テメェのしてることはつまらねぇことだ
 わかるか
 わからねぇだろ
 カンタンにきめつけちまうからだ
 きめつけてテメェのなかでモミクチャにしようとしても
 そうはとんやがおろさねぇ
 みくだしとるんとちがうか
 ダイガクかなんかしらねぇが
 いったいどこがどんなふうにテメェのからだがダイガクになったんか
 いうてみぃや
 カンタンに「シ」なんてつこうとるが
 ほんまにわかるんか
 テメェに
 「シ」はちゃんちゃらです
 ってか。
 おもしれぇ
 ここに鋸がある
 (となりのスーツにわたしてアゴでこちらをさす)
 オハナシしてみぃや
 ほれ
 はようせい
 テメェの「シ」は文字どおり
 テメェのかいている
 「シ」ちゃうんか 
 テメェがうみをこえて
 テレビのなかに
 はいっていったらええやろ
 (バクダットの中継が映ってしまっていた)
 そこで
 「シ」みながらテメェのいう「シ」かいとったらええやろ
 そしたら
 よんだるさかい
 ガクトドウインしらんやろなぁ
 ヤツラかなしむよってな こないなはなしきいたら
 はっきりいってきぃがむしゃくしゃするんや
 テメェらのそうしたくだりすべて
 ワカイじゃいまどきゆるされへんで
 もう人相みんでも
 人相みえみえや
 ぎょろっとした目しとるんやろ
 まゆげ ふとうて
 しらーっとトオクのほうでもみてんのやろ?
 たまらんで
 なぁ
 いちどでええから
 ホンキでかかってきぃや
 おれはそんなもん
 テメェらのいっとる「シ」おもうとるんや
 なんもかかんでもえぇ
 こっちのココにかいてみぃや
 紙ならなんぼでもワシでもかいたる
 ココにかいてみぃや
 ほんま きぃにさわるんや
 テメェらのウチワだけならゆるしたるさかい
 だけんどもよぉ
 テレビしかみぃひんこわっぱに
 ドンパチなんかどうでもええやと
 みぃひんことはかいたらあかんで 
 おもうとることだけにせぇな
 ウソみえみえや
 まるばつとちゃうんやな
 ウソみえみえなんや
 そしたらまたジダイや、なんてぬかしよるやろ
 ほんま たまらんで
 なぁ
 ええかぁ
 もういちどいったる
 そこのボウズ
 ようきけぇ
 こんど「シ」なんてぬかしよったら
 ドタマぶちぬいたる
 そんでもって
 ドタマなしで
 「シ」かけぇいや
 よっぽど「シ」になるでぇ
 カカカカ 
   
  *
 
スーツはとっくに「あがり」
ぽかんとあいてしまっていたけど
ジジイひとり
安全帯を腰にまき
左頬 もみじほどの火傷の跡を沈ませて
おちょこをぐいぐい こちらをみない
ようにみていた午前0時21分

鋸 電球の光を衒い
油の筋を幾重にも浮かびあがらせ
籐が巻かれたグリップに
土埃は休んでいる
手入れがいきとどいている(ように映る)
ジジイの宝刀か。

たしかに誰かがいっていた
「ドウデモイイ」と思うモノほど
ワルアガキをするモノなんだと



ジジイに鋸をわたす

だまってついでやる

ジジイ こちらをみないようにみて

のみほす
 
ついでくる

オレものみほす





自由詩 居酒屋の「ジジイ」に愛をこめて Copyright バンブーブンバ 2003-12-07 12:41:43
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