通り雨
落合朱美

ワイパーが傷んでいるから
拭いきれない水滴で視界がぼやける
思わず停めたパーキングで
いらだちが募り空をにらみつけた

そう これが私なんだ
些細なことに感情を左右されて
誰かのせいにすることで
やっと自分を保っている


あの人は半分も悪くなかった


雨はいよいよ横殴りに
フロントガラス越しに
私を責め立てるみたいに
大粒の珠をぶつけてくる


あの人の声が聴きたい


開きかけた携帯電話
着信履歴をたどろうとして
思い直して閉じる


何度同じことを繰り返したんだろう


激しく罵倒しあって
寂しさに負けては
何事もなかったように寄り添って
そんなことばかりの年月


今もしも電話をかけたらきっと
あの人は静かに受け入れてくれる


だけどそれはもう
愛情なんかじゃなくて
ただのふたりの弱さだということを
たぶんあの人も知っている


それにしても
どうしてこんな日に雨なんだろう

痛いね
痛すぎるね


泣いていればいいと思った
せめてあの人もこの激しい雨の中
車を走らせながら
私を思い出して

泣いていればいいと思った




自由詩 通り雨 Copyright 落合朱美 2005-06-17 23:57:08
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