衝撃のあとに
紫音

9・11
あのときの衝撃をボクは忘れない
あのとき
ボク


牢獄から開放されたように
とてもスッキリした

そこに人がいて
大勢死んで
そんなことは想像しなかった

ただ

そう
何か壮大な幕引きの
ようにまるで
終わりのない劇
に終幕があった


不謹慎な誘惑だ
ボクは
悲しくなかった
涙が出なかった
真珠湾の日の
作家たちのように喝采は
しなかったけれど

この現実の希薄

それは
衝撃だった

戦争とか差別とか
まるで身近に感じない
そのことの意味は
あの日の衝撃

ニュースキャスターの
通り一辺倒の
中身がないコメント
の方が
いかにも現実だった

あの日見たはずの
あの光景は
ボクに何を
くれた

人が死んで
悲劇がループして
そこに
現実があることを
そして
それがボクに
現実の敗北を
わからせたことを
キミは見たか

空疎なバラックのように
ボクに何ももたらさず
ただわけもなく
スッキリした
という厳然とした
事実の無力を
キミは見たか

それでも
何事もなく
キミには
朝がやってきて
何事もなく
一日が過ぎて
いくことを
ボクは知ってしまった
わかりたくもなかった
この現実を
ボクは知ってしまった

あんまりおかしいから
笑うことさえできずにいる
ボクはいったい

として生きているのか
この無感覚な生き物がここにいて
痛覚を喪失した心が
誰のものかも

あまりの衝撃に

忘れてしまったよ


自由詩 衝撃のあとに Copyright 紫音 2005-06-06 22:46:59
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