五十音頭韻ポエムか〜こ
佐々宝砂
[か]
彼女は語る
空笑いを髪に飾って
かりそめに交わすカタルシスを
からみあうカドリールを
軽やかなカデンツァを
金切り声で語る語る
彼は彼で
寡黙な肩で風切って
過失を数え
枷を固め
革命にかつえ
寡黙な肩で騙る騙る
神よ かるい片恋を彼等に
勘違いの
金縛りの
黴くさい
片恋を彼等に
叶わぬ片恋はカノン
噛みあわぬ悲しみはカノン
かるくかるく回転して
彼等を解放する
かもね
[き]
屹立する器具は究極
奇想の機械がきしめば
奇態な幾何がきざす
きのう岸辺に来た君の
気がかりな記憶を切る
きのうを切り捨てる
傷は消える
きっと
今日築き直す記憶の君は
きらきらと綺麗
屹立する器具は奇妙
稀薄な絆を
奇天烈な機知に帰す
[く]
くれないくるめく暮れがた
くちなしはくらくらと狂わしく
くさぐさをくるんでゆきます
くちからくちへ
くだものを下さい
口さがない傀儡(くぐつ)たちには
くつわをくれて口封じ
悔やみませんとも
首かせくびき食らおうとも
雲のうえには久遠
雲居にくらます訓示のくさび
くちなしの暮れがたには
くりごとも砕けましょう
苦しみも朽ち果てましょう
くちびるからくちびるへ
くだものを下さい
[け]
化粧直して消し止める
懸想のけしき懈怠のけがれ
眷恋けしかけけらけらと
けちな見地を蹴ちらかし
けむたい嫌疑は蹴たぐりかえし
けろり蹴たおす喧嘩の気配
今朝の鶏鳴
剣が峰
喧々囂々
乾坤一擲
蹴爪毛皮のけだものは
気高い化身と化生して
けだし決意は桁外れ
けれんの結句はケセラセラ
[こ]
焦がれる心を凍らせてこのかた
恋を乞うたび拳こわばっていたが
ここいらは濃緑に苔むして
胡蝶たちはこぞって小躍りする
こがねの木漏れ日がここぞと応える
この濃緑に
この胡蝶に
この木漏れ日に
ことのはことだま籠もるなら
ことさら拒むまい
孤高にこだわるまい
小賢しい言葉は金輪際こぼすまい
胡蝶たちがこいねがう言葉を
ことごとに転がし続けよう
小揺るぎなく懲りずまに
こよなく恋え言葉よ
小鳥の声にことよせて
言祝げよ言葉よ
自由詩
五十音頭韻ポエムか〜こ
Copyright
佐々宝砂
2003-12-03 03:36:43
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五十音頭韻ポエム
ポエムス(パキーネ詩編)