詩と音
天使るび(静けさが恋しい)
夢。
殺戮の亡き骸を抱いた太陽がぽしゅんと溶ける。ぼくは悶絶するほど絶滅へと恋焦がれている。
森林の産毛を撫でる巨人の手が優しいわけがないのだ。巣立ちのできない小鳥たちと巣ごと落ちてゆく卵が大地の上でぴしゃんと割れる。
ぼくと想いを共有するきみとの合い言葉は「シネ」だよ。
風のなかで風を待つ。特定の風とだけお喋りするような心地よさ。きみは「シネ」といって風でできた花束をぼくへと渡して飛んでゆく。ぼくは急いで羽ばたいてきみの名前を呼んでいる「シネ」
「シネ」といって微笑み合う。「シネ」といって転がるように空中で抱きしめ合った。
この街では甲殻で武装した巨人たちがビルディングに擬態している。直立二足歩行の生きものは巨人たちの体内で繁殖する。それからすぐにいなくなる。
「シネ(これが命か?)」
「シネ(儚い)」
ぼくたちは透明の身体で空を飛ぶ。詩と音でできた讃美歌を奏でるように歌いながら合い言葉の音符を並べた。