しあわせよりも血あわせ
菊西 夕座
――完成された時のなかでは、空想だったあの人も、生まれ、生きて、心をふるわせ、
すべてのとまってしまった血をもういちどあたためてくれる。そのとき、わたしの血は、空想から現実へと輸血されている。
「長いあいだかかりましたが時間が完成しました」
―どのくらい時間がかかったのかね?
「そうとうな長さですが時間は問題ではありません」
―どうして?
「時(ジ)っとしていましたから」
―どのくらい時っとしていたのかな?
「はかりしれない長さですがいまは秤のうえです」
―というと?
「時間の重さが釣り合ったということです」
―なにと?
「実感です」
―じかんとじっかんはちとちがう気もするが
「同感です」
―同じということ?
「そうです」
―わたしと同じ意見?
「一見そのようにみえますが」
―じつはちがう?
「ジとツはジッとしています」
―ちがうのだね?
「一緒です」
―一緒に時ッとしている?
「血が合います」
―何型かね?
「Oです」
―わたしはA
「おあいこです」
―OAいこ?
「OAイコールです」
―OはAということ?
「ちとちがいます」
―血と血がいるね
「血にはちがいないです」
―血には血がいないね
「血には血がいないが血がいます」
―どっ血なんだい?
「どっちでも同ぢです」
―ちが濁ってるよ
「鼻血がでてしまったかも」
―時っとしといたほうがいいよ
「といたほうがよいでしょうか」
―抑えといたほうがいいよ
「やはり解いたほうがよいでしょか」
―といたら血がとまらないよ
「どのくらい抑えトイタらよいでしょうか」
―といたらだめだが抑えが効くまでだね
「オーさえエーとなるまでですね」
―抑えとなるまでだから、ほぼそのとおり
「OさえAとなってきました」
―ん?
「時(ヂ)がとまるとよいのですが」
―字が血がってるよ
「ちがうのはあなたの血もおなじです」
―血がわないよ
「それがちがうのです」
―それとは?
「ちです」
―わたしも血がでてる?
「でてきてます」
―どっち?
「Aの穴から」
―アナル?
「ちがいます」
―ちがいがもうわからない
「すっかり混ざっていますから」
―そうに血がいない
「血はいます」
―めまいがする
「しっかりチてください」
―チてるよ
「血がでてる実感はわきますか?」
―わかんない
「止まってきている証拠です」
―ヂが?
「時間です」
―まずいんじゃないか?
「混ざってますとも」
―まずいよ
「まず、いい調子です」
―時間がなくなってしまう
「完成まぢかです」
―まぢか?
「長いあいだかかりましたが時間が完成しました」
―どうなった?
「血がとまりました」
―脈がないのでは?
「文脈は生きています」
―ちゃんとつながってる?
「最初のほうにつながっています」
―時間は大丈夫?
「時間は問題ではありません」
―どうチて?
「また血がでてきましたよ」
―やっぱりヂッとしておくか?
「時っとさせておくにかぎります」
―そろそろチ事でもするか
「仕事をしてください」
―幸せよりも打ち合わせ優先だね?
「血あわせ済みです」
―ならよかった