自称詩人の彼方に
鏡文志

「僕には語るほどの人生は、ありませんでした。
パソコン、CD、映像、テレビ、ゲーム、勉強、読書。人生のほとんどを頭の中の遊びで過ごしてきました。人生のほとんどの欲望は、妄想で済ませられるものです。そんな私にとって、これだけは譲れないものがあります。それは晴れた昼下がりに飲む、生温い缶ビールです」
自称詩人、一日も働いていないのに、酒を食らうのみ。
「僕には守るほどのものが、ありませんでした。友達も恋人も両親も、別にいつ死んだっていいものです。自分だけが可愛いと言う本音に耳を塞ぎ目を背けながら、後ろめたさを抱いて生きてきました。そんな私にとって、人生で一度だけ自分を超えて愛してしまったものがあります。それは、猫の『ポチ』です」
自称詩人、誰にも愛されてないのに、愛を語るのみ。
「僕には才能と言えるほどのものが、ありませんでした。せいぜいカラオケでオバさんを二回泣かせた程度です。愛されもしないのに、愛されようとしました。抱きしめる勇気もないのに、抱きしめられたかった。認められもしてないのに、認められた気になっていた。そんな私にとって、一つだけ人生の希望というべき望みがあります。それは、死んだ後に、認められることです」
自称詩人、一人にも認めらていないのに、才を誇るのみ。
自称詩人、夢叶わずとも涙拭けるのに。自称詩人、永遠の物語神話に、一人耽るのみ。
酒と涙と深夜の幻聴。張り裂けそうな頭で、サイレンのような言葉綴る。


自由詩 自称詩人の彼方に Copyright 鏡文志 2024-10-24 16:36:22
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