もう、歌を歌うしかなかった
室町

ごーなな、ごーと指折って
なな、なな、を数えるうちに
バカバカしくもなり眠りにつく

次の夜
字余り字足らず能足らず
腹立ってきて「全破調!」と書く

野垂れ死にするかもしれぬと
黒パンを
胸に抱いてもぐもぐと歌うは
五木の子守唄

ぼた山で無力なじぶんに声をあげればふもとにて
銅鑼が鳴るなりわたしの城下町

浮気3回家出7回そんな妻をもいとしくて
夜を徘徊影を慕いて

棄てた女たちから殺される夢ばかりみて
朝の陽のまぶしさ君恋し

侮られて
調子はずれで歌う千昌夫の君がすべてさ

花嫁を式場から盗みて逃げし従兄弟は行方知れず
場末の温泉歌謡ショー夫婦で巡業せしとも聞く
いずこに流れるや涙のみさお

豪邸前に停まりたる外車を見ていたおまえに
せめて歌のひとつも歌うなり
小林旭自動車ショー歌

一晩で目覚めてくれよと望むなれど
深く眠れる人々は軍歌流れるまで起きずや

もういい加減にしろようんざりだ
帰って来たヨッパライよ
歌えよ大いに調子っぱずれに







自由詩  もう、歌を歌うしかなかった Copyright 室町 2024-02-28 08:45:24
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