村上春樹の粗悪な政治デマを糾弾する
室町

2002年9月8日、NYタイムズは「イラクが過去1、2年間にウラン濃縮技術に必要なアルミニウム管数千本を入手しようとしていた」という「政府関係者筋からの情報」を紙面に掲載した。
じつはこの記事、米政権首脳とNYタイムズが事前に綿密な打ち合わせをしてデマと承知のうえで発表した戦略的なフェイク記事だったのである。
この世論誘導記事が発端となって米軍のイラク攻撃が正当化されイラクでは40万人超の一般市民が米軍の空爆やミサイル攻撃によって犠牲になっている。
ニューヨーク・タイムズはこの事実をイラク開戦後もずっと隠蔽していた。そのためのちに「ブッシュ政権の情報操作に加担した」と厳しい指弾を受けることになる。
それ以後、西側主要メディアの報道を読むさい良心的な批評家や作家、思想家は必ず西側とは反対に位置する世界、「グローバルサウス」と呼ばれる非G7国家が発する情報(たとえばアルジャジーラ等)を参照するようになった。これは知性と良心を有する人間にとって今や必須の作業である。国際的文芸批評家や作家、思想家にはあたりまえの常識だがなぜか村上春樹という男は今だにNYタイムズのデマ記事を盲信して(ここらあたりは日本の現代詩人会や日本の批評家、思想家と同じだが)プロトタイプなプーチン非難を展開している。

  ニューヨークタイムズによれば、彼(プーチン大統領)は、
  ウクライナの戦争で息子が戦死したある母親に、面と向か
  ってこう言ったそうです。
 「このロシアでは、年間何万人もの人がアルコール乱用や交
  通事故で命を落としています。あなたの息子さんは、ウォ
  ッカの飲みすぎなんかで死ぬより、ずっと意味ある死に方
  をしたのです。」
 (2023年1月29日(日)にTOKYO FMで放送された「村上    春樹RADIO」)

巨大寡占資本とCIAの協力新聞社である(注1)NYタイムズのこの記事をわたしは過去に遡って調べてみたが探し出すことができなかった。
もしそんな記事がほんとうにあったとすればNYタイムズのことだから間違いなくプーチンの人格を毀損する目的で(読者を洗脳するための)創作記事である可能性は高い。
しかしわたしはプーチンが「国家のために名誉ある戦死を遂げた方々に心からの追悼を捧げます」とロシア正教教会で祈りを捧げた動画をみたことはある。そんなことは世界中の国々、とくに米国ではあたりまえのことである。
それは置くとして村上春樹はNYタイムスの記事?の内容を疑いもせず盲信しこう語っている。

  まったく凄いことを言いますよね。
  でもね、こういうのって巧妙なロジックのすり替えなんで
  す。だって、ウォッカや自動車は、本来、人を殺すために
  作られたものじゃありません。
  あくまで、付随的な、アクシデンタルな結果として、不幸
  にして人が亡くなるという結果が生まれる訳です。
  でも、戦争はそうじゃない。
  戦争は基本的に、人を殺傷することを目的として行われる
  行為です。
  そういう、本来は同じレベルに置くべきではない事柄を並
  べて、比較することで、物事をねじ曲げて、正当化してい
  く。
  これはなにもロシアだけではなく、戦争に携わる国の指導
  者がしばしば行うごまかしです。
  そして、彼ら自身は決して戦場には行きません。
  みなさんもね、そういう連中に言いくるめられないよう、
  十分、気をつけて下さいね。(同)

なんとベタでワンパタの発言か。作家が本来もつ鋭い風刺や洞察が少しもみられない。
たしかに村上がいうようにウォッカや自動車はモノである。そして戦争はモノではなく関係である。関係性がモノ(戦車・ミサイル等)を介して人を殺傷するのである。
この〈関係性〉とは何かわかっていたら村上はNYタイムスを盲信もしないだろうしトランプやプーチンを批判もできなかったはずである。
しかしも、よく考えてみると、
交通事故も関係性である。これも戦争と同じく関係性がモノ(車・バイク等)を介して人を殺傷しているのだ。当然、飲酒による死亡も、実はモノ(酒)による死亡というよりも関係性(アルコール中毒等)による死亡なのだ。中毒の原因が会社の倒産か、失業か失恋かは知らない。しかし社会的な(あるいは対人的な)関係性がアル中症に大きく作用していることは確かだ。
ここに鉛筆が一本ある。
この鉛筆が関係性次第では人の目を抉って殺す凶器にもなる。だから鉛筆が筆記用具であるか凶器であるか否かは関係性によって変わるのだ。そう語ると昔、蛾兆ボルカという投稿者が鉛筆はそのような目的で作られていないと反論した。鉛筆は凶器を目的として作られてはいないから凶器ではないと。
しかし、そのような目的(筆記用具性)がいくら鉛筆にこめられていようと鉛筆は残念ながらただのモノである。モノそのものに関係性はこめられない。それを持つ人が殺意を持てばそのモノはいつでも凶器になるのだ。
関係性が人を殺す。このことが理解されていなければ世界大戦以後の戦争の意味は理解できない。
では現代の戦争における関係性とは何か。
現代の戦争は勝ち敗けに重点が置かれていないのが特徴である。
だから米国の戦争はベトナム戦争以後、敗けることによって大儲けしているのだ。
戦争に勝つということはその国家を占有することになる。それはグローバル資本にとって損失でしかない。ある国を占領しつづけるということは多大な復興費用を必要とするからだ。それだけではなく防衛の義務も生じる。それがどれほどの損失であるか想像を絶する資本の投下を必要とするのだ。だから戦争を勃発させて軍産複合体が莫大な利益を得れば早々に退却することが求められる。
これが現代の戦争であり、〈関係性〉の意味である。人を殺すことは戦争の目的ではない。巨大な富の収奪が戦争の目的であって何百万もの人を殺すのは手段でしかない。

つまり村上春樹という通俗小説家は現代の戦争の意味を理解できていないのだ。これで作家というのだからあきれてものもいえない。
さらに村上は村上がいうところの「そういう連中(権力者)」がだれであるかも理解していない。グローバリストという概念がないから愚でもない小説を頭の悪い連中向けに書きつづけている。
もっとひどいのは村上が40万人もの犠牲を出したNYタイムズの腐敗と堕落を屁とも思わないでプーチンを貶めるための出所不明の童話のような記事をそのまんま信じていることだ。
なにがシステムと卵だ、ばかたれ。
要するにこれは西側主要メディアに寄生する通俗小説家村上春樹がプーチンを貶めることによって巨大寡占資本に忖度しているだけのタワゴトにすぎない。
しかしネットをみるとまだ社会も世界も知らない高校生などがこのたわごとに感動している。
じぶんでものを考えることを禁止された日本人の病んだ意識がこの国を蝕んでいる。



※注1
マサチューセッツ工科大学のリカルド・パグリシは2004年に 『 Being the New York Times: The Political Behaviour of a Newspaper 』 という論文を発表した。
この中で彼は1946年から1994年の期間におけるニューヨークタイムズの取り上げた記事を調査し、タイムズが民主党支持であることを統計から立証している。例えば大統領選では優先的に民主党候補を取り上げ、対立する共和党候補については小さな記事で扱う、などである。この論文は穏便な表現を使っていたがタイムズがCIAと密接な関係にあることを匂わせていた。
いうまでもなく米民主党は伝統的に戦争屋である。その戦争屋民主党に対立する共和党前大統領トランプは戦争嫌いで有名だ。かれは在任中戦争を起こさなかった。それどころか北朝鮮首脳とも積極的に会談を行い両国の交流をはかった。よってトランプ在任中、北朝鮮は日本に向けたミサイル発射実験は行っていない。また中東にも出向き、イスラエルとバーレンやUAEとの間に奇跡的な国交正常化をもたらした。よってトランプ在任中、中東は静かだった。またトランプはロシアのプーチンとも対話をはかり当然、トランプが大統領在任中ロシアとウクライナの間に衝突はなかった。

これはトランプが米国の産軍複合体に対して明確なノーをつきつけていたからだが、このことを裏返せば、世界の経済を牛耳っている巨大寡占資本にケンカを売っていたことになる。
当然といえば当然だが民主党寄りの米主要マスゴミはトランプをありもしない中傷記事で責め立てた。それにならって日本の主要マスゴミも(それに依存する識者、批評家も)トランプをコケにし狂人扱いしている。理由は簡単だ。日本のマスゴミもタイムズ同様、欧米の巨大資本に一ミリだって頭が上がらないからである。


散文(批評随筆小説等) 村上春樹の粗悪な政治デマを糾弾する Copyright 室町 2024-02-11 10:19:19
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