黒板
たもつ



雨の初日
都会にも雨が降った
たくさんのものが濡れて
雨音の音や
雨水の水が
ふとした街路の様子を
美しく満たしていく
人混みの中で感じる
植物の吐息
どうしても
辿り着けない教室がある
生命はそこにあるはずなのに
風の通り道だけが
川のように流れる続ける
あなたが笑う
はにかんで笑う
地下鉄の色をしきりに
気にしているけれど
繰り返される季節にも
わたしたちの耳は
ようやく馴染んだのだった
薄い層のカーブを曲がり
その先に溶け出す熱の塊
黒板に文字を書くと
わたしたちの拙い都会は
そこで終わる





(初出 R6.1.30 日本WEB詩人会)


自由詩 黒板 Copyright たもつ 2024-01-31 17:38:35
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