初秋の気化現象に関する一報告 (旧作)
石村



つめたい自転のひだひだから風のたましひもきつくかたより

伯林青のベルリンブルーそれのだまつて行き過ぎるさまは何だ。

とても九月の心ない祈りやみづつぽい敬虔の

能くすみずみまで関知するところではない。

すくなくともしんじつな天然の労働が

ひとつのすさんだ明滅のわざをなすのは

不可欠(?)の天性であると云へなくもない……

山々の酸化したかたまりは

くろぐろとあらびてもちあがり

喧しくすみわたつて散乱する偏光のなかに

かへつておちついてねむるものだ。

(何もかもみなむづかしく

 たくましいこたへなどありさうもない……)

そしてわたしは野の風にひどく錆び

からだのなかはやけにすずしくなつてゐる。

日記の表紙にでも掌をあてれば

それは青く希薄になつて真言も透ける。

《読めないぞ、読めないだらう……》

それみたことか―― わたしはすでに、

やむをえない感傷の形式に荒れて

鳥かとんびのやうにとんでみるだけだ。



     (一九九一年八月二十五日)




自由詩 初秋の気化現象に関する一報告 (旧作) Copyright 石村 2023-10-08 14:00:41
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