無題
モリマサ公

心のつらぬきは今は
冴え冴えと他人をつらぬいている

よくわからないように
うまく散りばめた鍵盤を
叩き散らかして封じ込める
ひんやりとさわる指に似て
どこかでふうと吹く風の音が耳をかすめ
シオマネキの腕がふられている
行きたかった場所がふいにあらわれ
目を閉じる間も無く消え
蛍光灯に照らし出されていた
一人分の骨格
が半分だけ埋まってて
記憶に残った
脳神経がアクセスできて
花模様のミニスカートが揺れている
マンションの屋上で
ピンク色のリボンをほどいてキャップに変え
パーソナルコンピューターをたたく現在
死なない程度の確実さで
繰り出される
キックアンドリターン
軸足をその方向に向けて蹴るとうまくいく
芝生に寝転ぶ
腕や足に登ってくる蟻
飛んでくるボール
空には無数にみえない傷ばかり
すごく静かにくっついたり
離れたりを繰り返している
墓の見える庭でスコーンとビールをいただく
文字はどこからも湧かず
最後に数字だけが並んでいるが読めない
「わかんないけど、今日何日だっけ?」
国産車のエンジンの音が上昇気流にのり
どこまでもいけそうで
いけない俺たちは繊細で
かしこい丘にもなれず
すてきな谷にもなれず
またすばらしい明日は来た
高いところから飛ぶ気分ではもうない
いずれ死ぬ
事故か寿命か病気か呪いで
そのときに記憶はもう
ないのだ
居場所を探しに行こう
歩いてはいけないぐらいの近さの
感情的で輪郭として生きること
ができる
燃えている炎の中の淋しいくらいの
明るい景色と情熱で


自由詩 無題 Copyright モリマサ公 2023-09-13 21:16:02
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