骨のすべて
室町

寝転んまだまま
垂れた紐を引っ張ると
ドーナツのような円形の骨が光る
おれはそれを蛍光骨と名付けた
蛍光骨の尻尾のようなものを紐骨と名付ける
そんな遊びが
まわりのものを骨にかえた
おれの彼女の火葬の日だった
骨のような茶碗に舎利を山盛りして
骨のような箸でかっこむ
骨のような自転車で斎場へ向かうと
火葬場の煙突からはもう薄いけむりが出ていた
いたいけないほど無防備な骨の彼女が
あられもない姿で引き出された
骨のマヤ
家族の許可をえて骨を拾わせてもらう
広がった眼窩の奥に涙骨(るいこつ)を探したが
みつからなかった
ならば 小さな骨をひとつ軍手に乗せた
案内係の隠亡さんがそれは
舌骨(ぜっこつ)ですねという
よく見つけましたね
家に帰る
金魚が一匹泳ぐ水槽に舌骨をいれた

金魚は舌骨を枕に眠っていた






自由詩 骨のすべて Copyright 室町 2023-09-06 06:14:47
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