骨のすべて
室町
寝転んまだまま
垂れた紐を引っ張ると
ドーナツのような円形の骨が光る
おれはそれを蛍光骨と名付けた
蛍光骨の尻尾のようなものを紐骨と名付ける
そんな遊びが
まわりのものを骨にかえた
おれの彼女の火葬の日だった
骨のような茶碗に舎利を山盛りして
骨のような箸でかっこむ
骨のような自転車で斎場へ向かうと
火葬場の煙突からはもう薄いけむりが出ていた
いたいけないほど無防備な骨の彼女が
あられもない姿で引き出された
骨のマヤ
家族の許可をえて骨を拾わせてもらう
広がった眼窩の奥に涙骨(るいこつ)を探したが
みつからなかった
ならば 小さな骨をひとつ軍手に乗せた
案内係の隠亡さんがそれは
舌骨(ぜっこつ)ですねという
よく見つけましたね
家に帰る
金魚が一匹泳ぐ水槽に舌骨をいれた
夜
金魚は舌骨を枕に眠っていた