みんないってしまったのかい
室町

みずいろと夏草のはざまに
夜の酒瓶のかけらのように散って
反復する波のリズムを聴いていた
あまりにのんびり屋の
きみたち
ユキゾラホトトギス

ハグルマケボリ

リュウキュウアオイ

ニッポンオトメヒメゴコロ

ケッショウツノオリイレ

イチゴナツモモ

サツマアサリ

アデヤカイモ

テマリカノコ

テンニョノカムリ
......

電信柱が水平線の彼方までのびて
よこたわる仕切り線ごとに空は
色を失い
遠くでは雷雲がひしめいている
ぼくたちの結界は
もう
標高線から消えてしまった

一握の砂をにぎれば
テンシノツバサのかけらが
手のひらを刺す
みんないってしまったのかい?
小さな紅いしるしと
かすかな
痛みを残して

老婆が奏でる
一期一会の子守唄のように
風が吹いている
そのささやきに逆らうように
手づくりのマルオミナエシを
砂に埋める
何も知らない子どもたちが騙されて
高笑いをあげる光景を
思いえがきながら


自由詩 みんないってしまったのかい Copyright 室町 2023-08-11 17:07:41
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