uroboros
医ヰ嶋蠱毒

「殉教者の髑髏に唾を吐き」
「遍く救済をドス黒く塗れ」

尾を嚙む蛇の口に擬態する赫色が血を零すスティグマ
喇叭の音に破れた鼓膜への雷鳴の轟が聖痕を灼き
白亜の病棟、陰鬱なベッドで瞬く真空管
洗脳された仔の握る天使が授けた銀色の鍵は
(赦されぬ咎の心臓を貫くような悔恨を)
母の子宮へと沈め、秘匿するように埋葬されて

「終末は半歩先の墓穴から飛沫く脳漿であろう?」

弾丸に穿たれた柔らかな皮膚の疵痕から
五臓六腑の陶酔と錯乱を誘う(神経を刺す)
遅効性の毒を追憶せよ反基督者
粛清された手弱女と嬰児達の肋骨に群がる
巨きな蛆蟲、高らかに謡われる歪んだ軍歌
ホルムアルデヒドに溺れ砂を噛む肥満体の男
深海から這い上り腐臭を司る旧き神々
軈てホムンクルスが棲むウランガラスのフラスコは
悪夢の底より滾々と湧く液状の狂気に満たされる

強姦された寡婦の乳房に
死兆星のような矮さな黒子が芽吹く頃
レディメイドの怪物よりも根源的な恐怖の楽典が繙かれるから
俺の背骨にドレスのような鵬翼を生やせよ逃避
(ウロボロスの円環は唯一の理として在り)
擬人化された深淵達が隊伍を組み布き歩み征く
古の呪詛の舫を解き影を喚ぶ為の触腕が四つ
其の名は糜爛、其の名は猖獗
其の名は怨嗟、其の名は憎悪
屍の眼窩にも似た朔の裏側で独裁者は産声を上げる


自由詩 uroboros Copyright 医ヰ嶋蠱毒 2023-08-09 12:37:12
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