殺戮人形
医ヰ嶋蠱毒

(白堊の額が丸い卵殻のようだ、ありふれた惨劇の前に滴る)
仮初の脳髄を秘匿して埀れる緞帳のような濡鴉の髪が
(眸を刻め)
(密儀による覚醒)
鬼神の靣を被り純白の外套へ荒縄を隠し
眼窩より溢れるドス黒い「猥雑」が歪んだ歩みを嬰児のように包む
「あなたのうしろにいるの」
囁きと咀嚼、旧いrevolverの銃弾が一羽の鵂を撃ち墜とすのは
現世の「まがつぼし」、その先触れとして
(飽和する液状の譫妄を啜れ)
(そして夜は深淵く)
球体が繫ぐ四肢、断章に示された猛毒に皮膚を馴染ませ
獲物を捜し彷徨う人型の體を舐める滑らかな陰翳は
振り向いた先の木立へ佇む幼女の黝い憂鬱をなぞる殺戮
(断末魔を追う沈黙の大群と描かれた……)
跫音、跫音、跫音、鋭利な踵が泥濘を穿つ跫音ばかり
おまえは閻魔蟋蟀の聲を触媒にhypnosの夢を喰べている
「おねむりなさいな」
血溜の上で揺れる「縊死」の頸許に赫い愛をくちづけてから戦慄せよ
視神経から流れ込む天啓におまえは狂う
「あいして」


自由詩 殺戮人形 Copyright 医ヰ嶋蠱毒 2023-08-07 19:24:18
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