捕食者
医ヰ嶋蠱毒

白い
舞踏
渦を巻く

視界が
薄皮を剥かれた
果物の
鮮やかな血のように
絶え間なく
被膜を
溶かしては
再び
鳴る

穿たれた
私のなかへ
ぞわぞわと
注がれる
脳の
原液
繁殖する
無数の
孔は
敷設された
時間を示唆し得る
飾り窓越しに
風景へ
針を刺す

黒く
蟲の

黒く
蠢き
眼窩の裏で
列車が奔る
一条に光る
魔笛のように

細胞の奥底へ
播かれる
より原始の
記憶として
獣の
足跡が
津波のように
聳え立つだろう
我々は
ただ
本能に従い
産まれたそのときに
恐怖を覚えさえすればよい

鍵盤
指を這わせ
曝け出された
静物を
聴け
躙り寄る結末は
絶えず
おぞましいから
猫は
蛇を模倣して
鋭敏に
月を仰ぐ
受容のための
テロメアを齧り
木立に
遮られたまま
また一つの
世界が
尽きる様を
観ていた

瞬きの度
積重なる
トゥシューズ
亀卜のように
罅割れ
やがて貝殻は
篝火へ蟠る
一握の灰に似てゆく
捧げられた
祈る掌から
食餌の比喩として
貪り来るだろう
触角が
背筋を撫でる


自由詩 捕食者 Copyright 医ヰ嶋蠱毒 2023-07-25 19:09:26
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