明るい闇の中で(八)
おぼろん

「今一度問う。お前は、わたしに従うか、従わないか?」
「ふん。その結果を見たいのであれば、今すぐわたしを釈放することだな。
 そこに、お前の見たい結果も見えてくることだろう、魔導士よ」
「わたしの見たい結果?」──エインスベルは、そのとき戸惑うようであった。

(今、自分は自由の身である)ということを、彼女は知っていた。
だが、その自由とはいかに使われるべきものだろうか?
策謀に対してか? 己の人生に対してか? そこに、目まぐるしい混沌があることを、
エインスベルは分かっていた。すでに、自分は世界によって引き裂かれたいる存在だ、と。

エインスベルは、最後の問いかけをフランキスにぶつけた。
「汝は生きたいか? それとも、ここで生を終わらせたいか?」と。
フランキスは、口を噤んだ。彼とても、生き永らえることは、望んでいたのである。

「対価は何だ?」と、フランキスは答えた。それは不遜でもあり、率直でもある。
「対価は何だ? 俺がクーラス様を暗殺して、そこから得られるものとは?」
「この国の覇権」と、エインスベルは一言述べた。そして、一人の虜囚が解放された。


自由詩 明るい闇の中で(八) Copyright おぼろん 2022-10-09 22:58:35
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩