明るい闇の中で(五)
おぼろん

「わたしはお前の拘束を解こう」エインスベルは言った。
「そして、再度クーラスの暗殺を命じる」
「ふん! 命じるだと? お前はいつから国を代表する者となった?」
「この国の代表はクーラスだ。だからこそ、殺す必要がある」

「平和のためか? それともお前自身が成り上がるためか?」
「どちらでもない。世界を滅ぼさないためだ」
エインスベルはそう言うと、胸元から小さな魔法石を取り出した。
虹の魔法石である。その輝きに、フランキスも一瞬心を奪われた。

「それは何だ? 市場で安売りされている魔法石か?」
「これは、わたしの配下である盗賊ヨランが、わたしにもたらしたものだ」
「そのちっぽけな造物に、何が宿されているのかは知らない」と、フランキス。

「しかし、大方大したものではあるまい。こけおどしが過ぎるというものだ」
「果たしてそうかな?」エインスベルは、ここでにやりと笑った。
「お前も魔導を用いる者であろう。この魔法石は、魔導士ウィザムを殺す」


自由詩 明るい闇の中で(五) Copyright おぼろん 2022-10-08 22:46:32
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