盗賊ヨランとの契約(一)
おぼろん

「ヨランよ。お前はいったい何を思っているのか。勝算はあるのか?」
アイソニアの騎士は、逡巡しながら、盗賊ヨランに問いかけた。
約束の二日間が、すでに過ぎていた。傍らにはエイミノアもいる。
人間とオークとの間の確執を、彼は十分に承知していた。

「わたしは……」と、エイミノアは口を開いた。
「この冒険の成り行きが、クールラントに平和をもたらすものだと、
 信じております。エインスベル様は、死神ではありません。
 そこには確かな希望があるのです。クールラントを良き方向に導くと……」

「わたしもそれには同意だ。クールラントとアースランテは、
 今では敵国。そこには様々な利害関係、そして破滅をもたらす可能性もあるだろう。
 しかし、エインスベルは常に正義を信じている」

「あなたは様々なことをお分かりですね。そして、それを自らの心ひとつに、
 飲み込もうとしている」エイミノアは慎重に言葉を選びながら、言った。
「あなたは一人の人間です。大切な愛を貫こうとする者です」ヨランが言葉を引き継いだ。


自由詩 盗賊ヨランとの契約(一) Copyright おぼろん 2022-08-13 17:04:54
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