盗賊ヨランの旅(一)
おぼろん

季節は夏から秋へと移り変わろうとしていた。
盗賊ヨランは今、旅の途上にある。
目指しているのは、ヒスフェル聖国だった。
そして、ヨランの伴としてエイミノア・ラザンが同道している。

「もう少しで国境が見えてきます。今夜はここで野営しましょう」
ヨランは言った。それに対して、エイミノアは答える。
「今は少しでも先に進んだ方が良いのではないか?
 エインスベル様の命も、いつまで続くかわからない」
 
そこには、「何を悠長なことを言っているのか」という思いがあった。
エイミノアは怒りに駆られていたのである。
それは、運命に対するものとも、祭祀クーラスに対するものとも取れた。

「急いては事を仕損じると言います。今はわたしの言う通りにしてください」
「承知した。しかし、お前を完全に信用したわけではないぞ。
 エインスベル様を見捨てる素振りを見せたら、わたしはお前を斬る」  


自由詩 盗賊ヨランの旅(一) Copyright おぼろん 2022-06-25 17:26:20
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