囚われのエインスベル(二)(三)
おぼろん

    囚われのエインスベル(二)


「祭祀クーラスは、貴女の命を奪う心づもりでいます。
 すべての国家の実権を、彼に、と考えているのです」
「それはまずいな。ああ見えて、祭祀クーラスはタカ派だ。
 これから何を望むのか、あるいはこの国を破滅に導くのか……」

「クールラントは、国王の力が弱いです。
 ジギリス・ア・アルヌーは、祭祀クーラスに頼り切りです。
 その意見には、必ずや押し切られてしまうでしょう。
 貴女の命も大事ですが、国の未来も大事なのです」

エイミノア・ラザンは言う。その瞳には、憂慮の色があった。
オークたちは、ウィザムたちが作り出した、亜人である。
人間たちの社会にも、ある程度は溶け込んでいる。

それだからこそ、エインスベルとの面会も許されるのだ。
しかし、クールラントはオークの国、レ・スペラスと戦う立場。
決して、エイミノアの身は楽観視してはいられなかったであろう。





    囚われのエインスベル(三)


「そうか、そなたの身に頼るしかないな。
 アースランテは必ず再び力をつけてくる。
 そうなれば、次のライランテ戦争が起こるのは確実だ。
 わたしに、その時の居場所はあるのだろうか……」

「エインスベル様、あなたの力は強力です。
 ハッジズ・ア・ラ・ガランデが何を望もうと、
 マリアノス・アリア・ガルデがどんな戦術を使おうと、
 その企みは必ず阻止できるはすです」

そうして、ため息とともに言う。「早く、出来るだけ早く、
 ヨラン・フィデリコと連絡を取りましょう。
 彼はいつ、どこにいるのか、我々にも分かりませんからね」
 
「奴の居場所を求めても、容易には分かるまい。今も冒険の旅の途中か……」
エインスベルは笑った。それは久しぶりの笑いだと、エイミノアは思った。
「貴女の明るい笑顔。それがわたしども傭兵たちの救いです」


自由詩 囚われのエインスベル(二)(三) Copyright おぼろん 2022-05-26 15:01:24
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